日本エコミュージアム研究会

Japan Eomuseological Society

 
 

メルマガ99

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日本エコミュージアム研究会メールマガジン 99号   <2015.12.15>
発行人:吉兼秀夫  編集:中野喜吉
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かつて若い日、映画「2001年宇宙の旅」に胸をときめかせ、その続編「2010
年…」で、ソ連(当時)と米国の雪解けをエンディングに夢見て来た者にとっ
て、日本の宇宙飛行士・由井さんがロシアの船でバイコヌールに帰ってきたと
は、まさに「夢が現実」の様ではありますが、南沙諸島、安保法案、テロの多
発、高齢化社会と思い悩むことばかりの様な現実の生活に取り巻かれての年の
瀬は、息苦しい感さえします。ひとつでもそれこそ夢の様な嬉しいニュースが
聞けることを期待して新年を迎えたいと思います。(N)

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【目次】
1.フィールドワークとエコミュージアム
2.第4理事会議事録(省略)
3.事務局からのお願い

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1.フィールドワークとエコミュージアム
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三橋俊雄

京都に赴任して18年、振り返れば、学生とともに丹後半島の農山漁村を訪れ、
「野に出て生活を学ぶ」フィールドワーク(デザイン?サーベイ)を行ってき
た。そして多くの「地域の先生」たちとの出会いがあった。そこでは厳しい自
然と向き合いながらも逞しく生きる人びとの自然と共生してきた姿や生活技術、
生活文化を学ぶことができた。

その学びは、1998年の桶職人ご夫妻との出会いから始まった。
玄関先の水場には、山から引いた清水が張られた小振りの木桶に小粒の栗が
沈められている。軒先には大きな笊にこの地方独特の細長い茄子と厚肉のピー
マンが並べられ、箕にはいんげんのような野菜が干してある。静かである。生
活の気配はするが、案の定、家にはどなたも居られない。裏山の小道を少し登
ると小さな畑が広がり、はな子さんが畑仕事の最中であった。ひとしきり畑の
作物の話をしてから家に戻り土間から座敷に上がる。ちょうど鉄治さんが桶づ
くりのタガに使う山竹を手に戻ってきた。

はな子さんの冬場の仕事は藁仕事と編み物である。ひと冬の藁仕事は草履2
0?30足、オイソ(ショイコの背ベルト)を人から頼まれて6カケほどつくる。藁
を丸めてオイソをこすりつやとなめらかさを出す「コスリ」の作業がなかなか
辛いそうだ。鉄治さんが作るショイコの背当て部分の縄綯いもはな子さんが行
う。そして筵織りである。一人で筵1枚をつくるのに3日はかかるという。藁
打ちをし、縦糸の藁縄を6尋、64本綯う。両側の少し太めのミミナワを綯う。
横糸に用いる藁は長さ1メートル以上のモチネの藁でないとダメだそうだ。横
糸の藁を途中で繋ぐとできた筵に穴があいてしまうからである。

次に、集落の共同作業についてお聞きした。「クロアゲ(雪が消え落ち葉等
のみぞ掃除)」や「集落の植林(杉の植林、枝打ち、下刈り)」「稲立て(田の水
路の掃除)」などは村中で行う「総仕事」であった。10月の秋祭りはまだ続い
ているが、田植え後に行う「サナブリ(ご苦労さん会)」は家により行わないと
ころもある。「地蔵盆」「2月2日の火祭り(鉄治さんが4歳の時村中が火事
になり、そのことを忘れないように皆で話をする)」「9月1日の風日(台風が
ひどかった頃を思い休む)」「虫送り(太鼓をたたいて、ヌカムシオクッタ、フ
ネガタニオクッタと叫ぶ)」「キツネガリ(キツネガエリイッソウロウといって
狐を追い出す)」などは、今ではもう行われない年中行事である。

戦時中は「ジネゴ(稲穂のようなカヤの実をこいてビンの中で皮を剥ぎ臼で
ひいて団子にしたもの)」を食べたという。隣の「木子」集落との間にある共
有林の雑木を切り、焼き畑をして蕎麦をつくった。次の年には小豆やサツマイ
モをつくった。子牛を連れて行ったら作物を食べてしまったという。炭焼きも
行い、牛に背負わせて1里の山道を運んだそうだ。筵は大切にその寿命が尽き
るまで使い尽くされた。味噌は3年味噌(塩辛い)として大根やゴンボを漬け、
山仕事の弁当のおかずにした。山仕事に箸を忘れたら茅を削って代用した。炭
焼きに行くとき、道の生茶を摘み火であぶり、山の湧き水を汲んで土瓶で飲ん
だという。

今でも土間や納屋には鉄治さん手づくりの竹製ねずみ取りが置かれ、納屋の
糠山の中にはタヌキ取りの仕掛けが潜ませてあった。そばには長いベルト駆動
の脱穀機が置かれ、驚いたことに唐箕が現役で使われていた。

鉄治さんお手製の藁箒、藁たたき用の木槌、枝の曲がり具合を利用したショ
イコや納屋の方杖(ほうづえ)、砥石の台など、自然の造形を道具の形状とし
て見立て活用する「ブリコラージュ(器用仕事)」によるものづくりが生かさ
れていた。

茄子、ピーマン、栗、らっきょうなど、はな子さん手づくりの山の幸の昼ご
飯をごちそうになり、とうとう4時間あまりもおじゃましたであろうか、雨が
ぽつぽつ降り出してきたところで退出することにした。車まで送っていただい
たはな子さんのもつ雨傘は、まわり中がボロボロで、かろうじて真ん中に布が
かかっている程度であった。身なりも質素である。しかし、ご夫婦の暮らし方
や生活環境には、着飾らない自然態の美しさ、力強さ、豊かさが感じられた。
また、自然からのいただきものを大切にし、用のために自らがつくり、寿命が
つきるまで使い尽くす、いわば「使用価値」の世界を見ることができた。そし
て、何よりも、貴重な作業時間を割いて、われわれを暖かく迎え入れてくれた
心の温もりが、これが本当の豊かさの証かと、深く心に残った。

このように、訪れた宮津、京丹後、南丹、福知山、舞鶴などの里山では、自
然の恵みを受けながら自給自足的な身の丈にあった生活が営まれ、海山川の生
業において必要な道具を自らの手でつくり、自然を楽しみ感謝する「普段着」
の生活文化が健在であった。こうした地域に出向き、生活の現場から何かを学
ぼうとするとき、柳田国男は民俗学の立場から、地域のくらしを次のように読
み解いている。「多くの民間伝承は今まで気付かれざりしものの発見、文字以
外の力によって保留せられて居る、従来の活き方、働き方、考え方を、弘く人
生を学び知る手段として観察する。」そして地域調査に当たっては (1)生活外
形・目の採集・旅人の採集、(2)生活解説・耳と目との採集・奇寓者の採集、
(3)生活意識・心の採集・同郷人の採集の3つの視点が重要であると述べている。

このような視点で地域の「光」と出会い、その光を磨き、地域にお返しして
いく活動を続けてきた。私にとってのエコミュージアムの活動とはそのような
ものであり、これからも続けていきたいと思う。(三橋俊雄)

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2.第4理事会議事録(省略)
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「議事録」は、会員に直接送信済に付、WEB上には公開していません。

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3.事務局からのお知らせとお願い
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機関誌20号の発行が遅れ未だ発送できず、会員の皆様には、大変ご迷惑をお
掛けしています。お詫び申し上げます。

≪以下は毎号同じです。≫
▼ 会員の皆さん、それぞれの地域での活動の「ひとコマ」をご紹介下さい。
また、掲載された記事に対してのご意見、ご質問もお寄せ下さい。
メルマガを待って読んでいただけるよう内容を充実させるのも会員お一人お一
人のご参加が決め手です。ご投稿いただきたい記事として

1.ご自分の地域、あるいは訪問した「各地の活動から」
2.皆に知らせたい「行事予定のご案内・参加募集」
3.過去に訪れた場所への「気になる地域へのお伺い(質問)」
4.今後「会に望む活動」等など、特にテーマを絞りませんのでどしどし投稿
下さい。

▼ 会員外も含む、エコミュージアムに関心をお持ちの方々の情報交換の場と
してのメーリングリスト[エコミュージアムML]があります。
会員外も参加いただけますので、お知り合いにもご紹介ください。
1.お名前(本名)
2.E-mailアドレス
3.お住まいの都道府県名を事務局までお知らせください。

(このメルマガへは返信しないでください。)
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日本エコミュージアム研究会   Japan Ecomuseological Society
事務局:
〒516-2102 三重県度会郡度会町大野木1968-3 中野喜吉 気付
E-mail:   jimu@jecoms.jp
ホームページ http://www.jecoms.jp
口座名義:日本エコミュージアム研究会
郵便振替:00170-0-74380  (会費振込先はこちら)
銀行口座:ゆうちょ銀行 店名:二二八(ニニハチ)普通預金 1624950
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