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日本エコミュージアム研究会メールマガジン 26号 <2008.8.9>
発行人:吉兼秀夫、 編集人:中野喜吉
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[目次]
1.「文化財行政・既存博物館との連携部会」報告(概報)
2. 日本エコミュージアム研究会全国大会/明日香(予告)
3. 事務局からのお知らせ
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■1.「文化財行政・既存博物館との連携部会」報告(概報)
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2008年7月27日(日)午後1時から「文化財行政・既存博物館との連携部会」(略称
「文化財・博物館部会」)が開催されました。
本部会は、エコミュージアムと既存地域博物館(従来型博物館)・文化財保護行政
との連携やその課題などを様々な視点から検討していくことを目的に開催されてき
ました。今回の部会は、日本エコミュージアム研究会編『エコミュージアム
理念 と活動』(1997年 牧野出版)にも紹介されたことがある東京都新宿区の”新宿ミニ
博物館”についての報告とその見学会でした。
当日は、最初に法政大学 大学院棟(東京都新宿区)の教室で、”新宿ミニ博物館”
事業開始当初から関わってこられた担当者の北見恭一氏(新宿区役所文化観光
国際課 主任)から事業の具体的な話を伺いました。
北見氏の報告は、最初に新宿区の歴史と地勢について、「新宿区」が1947年
(昭和22) に成立し、その区名が甲州街道の宿場町として賑わった「内藤新宿」に
由来すること。
大正頃からは新宿駅周辺が開発され、戦後の歌舞伎町や新都心地区なども含め、
繁華街・歓楽街が街のイメージとなっていること。ついで昭和62年度から区の実施
計画事業として「街は博物館構想」がスタートしたが、その構想が全庁的な事業に
およぶ計画であったために、結局、上手くいかず、事業として残ったのが新宿歴史
博物館(文化財担当)の所管していた「新宿ミニ博物館」であったこと。しかしその
「新宿ミニ博物館」も事前の資源調査や地勢調査などが十分行われていない中で
計 画されてきたため、当初の計画が思うように進捗しなかったことなどについて
説明 がありました。
その後、報告は、「新宿ミニ博物館」事業の具体的な内容と設置されている7館の
活動や特色などが紹介され、最後に、ミニ博物館事業全体についての今後の
展望な どが話されました。
北見氏の報告をうけて、出席していた3名の方から以下のような質問や意見が
出さ れました。
(質問)「新宿ミニ博物館」事業を実施してきて、博物館側のメリットはありましたか。
(環境文化のための対話研究所 嵯峨創平氏)
(回答)博物館部門としてはあまりメリットはなかったが、文化財部門としては社寺
の文化財の公開を促進するための施設整備を、ミニ博物館の補助金を活用して
いた だくことで実現できた点が大変大きかった。(北見氏)
(質問)新宿区文化観光国際課に所属とのことですが、今年の秋には観光庁も設置さ
れる予定でもあり、「新宿ミニ博物館」が国際観光の受け入れの場として、新しく
考えられている施策はありますか。(丹青研究所 大山由美子氏)
(回答)文化観光国際課は、今年の4月に設置されたばかりで、昨年度までの文化国際
課(文化振興と国際交流所管)に観光と文化財が加わってスタートしています。ミニ
博物館を観光資源として積極的に発信していくのか、国際関係で言うと外国語標記等
を充実させていくのかなど、これから課として検討していくことになります。(北見氏)
(意見・質問)ミニ博物館構想は当初のペースでは出来てはいないものの、新宿という
地域は沢山の歴史・文化などの地域資源が豊富で、多様なエコミュージアムの展開が
できる恵まれたところだと思います。ゆっくりと進めていかれれば良いのではないで
しょうか。毎年予算獲得のために、各館の実績をどのように把握されていますか。
((特活)茨城の暮らしと景観を考える会 今橋克寿氏)
(回答)寺社では、参拝者の数を把握されていないのでデータは挙がってきません。
つまみかんざし博物館からは、来館者の人数のほか出前の出店・展示などの取組みに
ついても報告があります。いずれにせよ各館の業務に負担をかけないようにしています。
(北見氏)
報告会終了後、地下鉄で四ッ谷駅に移動し、ここを起点に、江戸城の城門であった
「四谷見附跡」から「内藤新宿」(現・新宿二丁目周辺)まで四谷地区の史跡・文化財
と新宿歴史博物館、さらにミニ博物館の須賀神社と太宗寺などを見学し、ミニ博物館
事業の現状を視察しました。
今回の部会は、都心で教育行政のセクションが担当し展開してきた「新宿ミニ博物館」
という極めて珍しいエコミュージアム的活動を取り上げ、その取り組みと実践活動に
ついて理解を深めるという趣旨での開催でしたが、西は兵庫県、北は茨城県などから
22名の方々が参加し、真夏に東京を歩くという本会にとっては初めての試みでしたが、
現地を見学し、日本でのエコミュージアムの多様な展開の可能性を探ることができま
した。
馬場憲一(JECOMS理事)
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■2.2008年度日本エコミュージアム研究会全国大会(予告)
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詳細については変更の可能性もあり
テーマ「地域まるごと博物館構想と世界遺産」
日本エコミュージアム研究会(http://www.jecoms.jp)
会長 吉兼秀夫(yosikane@hannan-u.ac.jp)
大会の趣旨
エコミュージアム活動はますます全国で増加し、エコミュージアムの概念の普及が
進んでいることを示しています。また、その捉え方や取り組み方は地域の実状に合
わせた多様で個性的なものとなっています。一方、世界遺産登録における公募制の
導入で多くの地域が登録をめざし始めています。世界遺産は住民の生活遺産に力点
を置くエコミュージアムとは方向が違うものと思われがちであったかも知れませんが、
地域の環境と一体化した文化的景観への注目度が増し、世界遺産登録をめぐって地域
の遺産への再認識を指向する活動が多くなっている現状では、両者の共通点と相互の
協力関係を検討することは意味あるものとなっています。
日本エコミュージアム研究会(略称 JECOMS)は2008年度、明日香村まるごと博物館
の実現を目指し、同時に世界遺産暫定リストに掲載された奈良県明日香村を会場として
エコミュージアムと世界遺産の関係について検討したいと思います。また、日本エコ
ミュージアム研究会に加入されてはいないが、エコミュージアムとして注目すべき活動
をされている団体もお招きし、相互の情報交換を含めて議論させていただき、エコ
ミュージアムサミットと題したシンポジウムをあわせて開催したいと思います。皆様
のご参加をお待ちしております。
日時
2008年11月8日(土)~9日(日)
開催場所
11月8日 奈良県明日香村 研修宿泊施設 祝戸荘(宿泊も同じ)宿泊定員 60-80人
11月9日 奈良県明日香村中央公民館 250人収容(一般公開)
主催
日本エコミュージアム研究会
共催
大化塾(明日香村むらづくり集団)
明日香村
飛鳥保存財団
後援(予定)
国土交通省近畿運輸局
奈良県
国営飛鳥歴史公園
日程
11月8日(土)午後13時00分 開会
l ワークショップ&ガイドウォーク(4-5分科会)
l ウェルカムパーティー(地元素材による食のプレゼンテーション)
l 村民劇団寸劇
l 夜なべ談義(地酒など持ち込み歓迎)
11月9日(日) 中央公民館にて開催
早朝 野鳥観察会を兼ねた里山ウォーク
午前 ワークショップ 初日のワークショップの共有と提案・発表
パネル展示(ポスターセッション 村内事例および全国事例))
午後 13時30分開演
l 歓迎演奏
「八雲琴」(明日香村伝承芸能保存会)
l 基調講演
「石見銀山協働会議の成果」
島根県大田市教育部長 大國晴雄
l シンポジウム(エコミュージアムサミット)
北海道壮瞥町(洞爺湖周辺地域エコミュージアム ジオパーク候補)
三松正夫記念館長(洞爺湖周辺エコミュージアム友の会長) 三松三朗
山形県朝日町(朝日町エコミュージアム実践地 世界遺産候補最上川流域)
NPO朝日町エコミュージアム協会 副代表理事 安藤竜二
山口県萩市(萩まちじゅう博物館 世界遺産候補)
萩まちじゅう博物館館長 高木正熙
鹿児島県奄美市(奄美ミュージアム 世界遺産候補)
奄美市立奄美博物館館長 中山清美
コーディネーター
日本エコミュージアム研究会会長 大化塾塾長 吉兼秀夫
コメンター
明日香村村長 関義清
l 閉会セレモニー
*初日と2日目午前は明日香村のまるごと博物館資産を体験していただき、今後の
活用への意見を頂くことが大きな目的になります。また、夜なべ談義とポスター
展示によって全国のエコミュージアム活動団体の情報交換と議論の場を提供します。
2日目午後はエコミュージアムサミットと題して日本エコミュージアム研究会に加入
していない団体にも呼びかけてエコミュージアム(まるごと博物館活動)の方向を
検討し、あわせて世界遺産登録活動等との関係について検討します。
招待者は変更されることもあります。
●予定されるワークショップ
①石舞台古墳から奥飛鳥ウォーキング
石舞台古墳見学のあと、阪田(都塚古墳、うまし酒オーナー制度)、稲渕(棚田
保存、案山子ロード、勧請縄、石橋、南渕請安の墓)、栢森(勧請縄、女渕、森の
手作り塾、飛鳥川源流保存)の3集落をボランティアガイドと巡り、栢森では景観
復元にあつい思いも持つ古老のお話を聞きます。
②竹細工づくり
竹の浸食は大きな問題になっています。飛鳥歴史公園里山クラブのメンバーと
明日香村の竹を実際に伐り、食器など竹細工づくりをしながら解決策を考えます。
③高松塚古墳壁画・キトラ古墳壁画を現場で考える
高松塚古墳壁画もキトラ古墳壁画もカビなどによる劣化によって高松塚は解体、
キトラは壁画はぎ取りによって修復作業に入っています。主を失った古墳を訪ねて
遺跡のあり方について考えます。あわせてキトラ古墳周辺地域の整備計画について
のアイデアを皆さんで出していただきます。
④メインルートを歩く
大化改新の舞台と言われる板葺宮跡から飛鳥京の遺跡発掘場所をボランティア
ガイドと訪ね飛鳥寺、飛鳥資料館で解説を聞きます。
⑤「明日香まるごと体験プログラム」の体験(未定)
「明日香村まるごと体験プログラム」の中から古代ガラスづくりまたはこんにゃく
づくり体験を行います
●資料展示コーナーの設置
1団体にコルクボード1枚(新聞2頁分くらい)用意します。参加者の活動の写真や
資料を自由に貼って紹介してください。パネルごとご持参いただいた方は会場に
そのまま展示していただいて結構です
●参加費等(予定)
宿泊費(祝戸荘)朝食付き6000円
交流会および夜なべ談義 4000円
11月9日(日)昼食 (飛鳥鍋と聖徳弁当)1000円
参加費 2000円 ただしワークショップによって増減します。
申し込み要領は決まり次第
日本エコミュージアム研究会ホームページ(http://www.jecoms.jp)で公表します。
問合わせ先:吉兼秀夫 yosikane@hannan-u.ac.jp
申し込み jimu@jecoms.jp
詳細については変更の可能性もあり
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■3.事務局からのお知らせ
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全国大会については、詳細がプログラムが決定され次第、ホームページ掲載と、
会員の方にはE-メールでご連絡します。
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日本エコミュージアム研究会 Japan Ecomuseological Society
事務局
〒516-2102 三重県度会郡度会町大野木1968-3 中野喜吉 気付
E-mail: jimu@jecoms.jp FAX : 0596-62-0550
ホームページ http://www.jecoms.jp
郵便振替:00170-0-74380
銀行口座:三菱東京UFJ銀行 伊勢支店 普通3738016
口座名義:日本エコミュージアム研究会
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