2007/7 「文化財行政・既存博物館との連携部会」
「文化財行政・既存博物館との連携部会」報告(概報)
2008年7月27日(日)午後1時から「文化財行政・既存博物館との連携部会」(略称「文化財・博物館部会」)
が開催されました。
本部会は、エコミュージアムと既存地域博物館(従来型博物館)
・文化財保護行政との連携やその課題などを様々な視点から検討していくことを目的に開催されてきました。今回の部会は、日本エコミュージアム研究会編『エコミュージアム 理念と活動』(1997年 牧野出版)にも紹介されたことがある東京都新宿区の”新宿ミニ博物館”についての報告とその見学会でした。
当日は、最初に法政大学 大学院棟(東京都新宿区)の教室で、”新宿ミニ博物館”事業開始当初から関わってこられた担当者の北見恭一氏(新宿区役所文化観光国際課 主任)から事業の具体的な話を伺いました。
北見氏の報告は、最初に新宿区の歴史と地勢について、「新宿区」が1947年(昭和22)に成立し、その区名が甲州街道の宿場町として賑わった「内藤新宿」に由来すること。大正頃からは新宿駅周辺が開発され、戦後の歌舞伎町や新都心地区なども含め、繁華街・歓楽街が街のイメージとなっていること。ついで昭和62年度から区の実施計画事業として「街は博物館構想」がスタートしたが、その構想が全庁的な事業におよぶ計画であったために、結局、上手くいかず、事業として残ったのが新宿歴史博物館(文化財担当)の所管していた「新宿ミニ博物館」であったこと。しかしその「新宿ミニ博物館」も事前の資源調査や地勢調査などが十分行われていない中で計画されてきたため、当初の計画が思うように進捗しなかったことなどについて説明がありました。
その後、報告は、「新宿ミニ博物館」事業の具体的な内容と設置されている7館の活動や特色などが紹介され、最後に、ミニ博物館事業全体についての今後の展望などが話されました。
北見氏の報告をうけて、出席していた3名の方から以下のような質問や意見が出されました。
(質問)「新宿ミニ博物館」事業を実施してきて、博物館側のメリットはありましたか。
(環境文化のための対話研究所 嵯峨創平氏)
(回答)博物館部門としてはあまりメリットはなかったが、文化財部門としては社寺の文化財の公開を促進するための施設整備を、ミニ博物館の補助金を活用していただくことで実現できた点が大変大きかった。(北見氏)
(質問)新宿区文化観光国際課に所属とのことですが、今年の秋には観光庁も設置される予定でもあり、「新宿ミニ博物館」が国際観光の受け入れの場として、新しく考えられている施策はありますか。(丹青研究所 大山由美子氏)
(回答)文化観光国際課は、今年の4月に設置されたばかりで、昨年度までの文化国際課(文化振興と国際交流所管)に観光と文化財が加わってスタートしています。ミニ博物館を観光資源として積極的に発信していくのか、国際関係で言うと外国語標記等を充実させていくのかなど、これから課として検討していくことになります。(北見氏)
(意見・質問)ミニ博物館構想は当初のペースでは出来てはいないものの、新宿という地域は沢山の歴史・文化などの地域資源が豊富で、多様なエコミュージアムの展開ができる恵まれたところだと思います。ゆっくりと進めていかれれば良いのではないでしょうか。毎年予算獲得のために、各館の実績をどのように把握されていますか。 ((特活)
茨城の暮らしと景観を考える会 今橋克寿氏)
(回答)寺社では、参拝者の数を把握されていないのでデータは挙がってきません。つまみかんざし博物館からは、来館者の人数のほか出前の出店・展示などの取組みについても報告があります。いずれにせよ各館の業務に負担をかけないようにしています。(北見氏)
報告会終了後、地下鉄で四ッ谷駅に移動し、ここを起点に、江戸城の城門であった「四谷見附跡」から「内藤新宿」(現・新宿二丁目周辺)まで四谷地区の史跡・文化財と新宿歴史博物館、さらにミニ博物館の須賀神社と太宗寺などを見学し、ミニ博物館事業の現状を視察しました。
今回の部会は、都心で教育行政のセクションが担当し展開してきた「新宿ミニ博物館」という極めて珍しいエコミュージアム的活動を取り上げ、その取り組みと実践活動について理解を深めるという趣旨での開催でしたが、西は兵庫県、北は茨城県などから22名の方々が参加し、真夏に東京を歩くという本会にとっては初めての試みでしたが、現地を見学し、日本でのエコミュージアムの多様な展開の可能性を探ることができました。
馬場憲一(JECOMS理事)